Kumada Coupling

「やっぱりクロスカップリングは炭素-炭素結合形成のためのものだよね」と言う話になったときに、そこで選ぶのは「Hiyama Coupling」でもいいのだけれど、そこでこっちを選んだのは、この人名反応の求核剤が好きだから。
断腸の思いでマイルドな条件を使って、それでもGrignard試剤を求核剤としてしまうのが、どうしても俺の心をつかんでしまうのは、その「高反応性」ということへの諦めきれなさがいかにも有機合成化学的だなぁと思えてしまうから。
Grignard試剤のマグネシウム金属種の反応性を俺自身は冗長とは思わないし、そこまで求核力が高くはないだろうと思うけれど、一方でこれが亜鉛(Negishi Coupling)だったら、きっちりとマイルドな反応条件で反応を進行させてしまうだろうとも思う。
なのに、各所に頭を下げて迷惑かけて官能基受容性を下げてしまう、というあたり、どうしても「自分を形作っている高過ぎる求核力を捨てられない求核剤」としてはたとえKumada Couplingがそういう反応でなかったとしても、親近感を禁じえない。
Kumada Coupling自体のCross Coupling草創期の反応開発経緯と合わせて、そんなことを彼女に話してみたい。