Kumada Coupling
「やっぱりクロスカップリングは炭素-炭素結合形成のためのものだよね」と言う話になったときに、そこで選ぶのは「Hiyama Coupling」でもいいのだけれど、そこでこっちを選んだのは、この人名反応の求核剤が好きだから。
断腸の思いでマイルドな条件を使って、それでもGrignard試剤を求核剤としてしまうのが、どうしても俺の心をつかんでしまうのは、その「高反応性」ということへの諦めきれなさがいかにも有機合成化学的だなぁと思えてしまうから。
Grignard試剤のマグネシウム金属種の反応性を俺自身は冗長とは思わないし、そこまで求核力が高くはないだろうと思うけれど、一方でこれが亜鉛(Negishi Coupling)だったら、きっちりとマイルドな反応条件で反応を進行させてしまうだろうとも思う。
なのに、各所に頭を下げて迷惑かけて官能基受容性を下げてしまう、というあたり、どうしても「自分を形作っている高過ぎる求核力を捨てられない求核剤」としてはたとえKumada Couplingがそういう反応でなかったとしても、親近感を禁じえない。
Kumada Coupling自体のCross Coupling草創期の反応開発経緯と合わせて、そんなことを彼女に話してみたい。
Tsuji-Trost Reaction
たぶんこれを見た彼女は「π-allylだよね」と言ってくるかもしれないが、そこが狙いといえば狙い。
これほどの反応がその後続いていないこと、日本で発見され、そのまま反応機構などが詳細に検討されてもおかしくなさそうなのに、アメリカで詳細に検討され日本人だけの名前が反応に冠されなかったこと、なんかを非オタ彼女と話してみたいかな、という妄想的願望。
Sharpless Asymmetric Dihydroxylation・Noyori Asymmetric Reducton
アレって典型的な「オタクが考える一般人に受け入れられそうな人名反応(そうオタクが思い込んでいるだけ。実際は全然受け入れられない)」そのものと言う意見には半分賛成・半分反対なのだけれど、それを彼女にぶつけて確かめるには一番よさそうな人名反応なんじゃないのかな。
「有機合成オタとしては、不斉触媒の作り出す遷移状態に基づいたSharpless Asymmetric DihydroxylationとNoyori Asymmetric Reductionを始めとする不斉誘起は"常識"としていいと思うんだけど率直に言ってどう?」って。
Suzuki-Miyaura Coupling
まぁ、いきなりかよとも思うけれど、「Suzuki-Miyaura Coupling以前」を濃縮しきっていて、「Suzuki-Miyaura Coupling以後」を決定づけたと言う点では外せないんだよなぁ。知名度もあるし。
ただ、ここで、オタトーク全開にしてしまうと、彼女との関係が崩れるかも。
情報過多なCross Coupling反応の開発経歴の数々について、特に、塩基共存下、ボレートがパラジウムにトランスメタレーションするという事実について、どれだけさらりと、嫌味にならず濃過ぎず、それでいて必要最小限の情報を彼女に伝えられるかということは、オタ側の「真のコミュニケーション能力」の試験としてはいいタスクだろうと思う。
有機合成化学オタが非オタの彼女に有機合成化学世界を軽く紹介するための10人名反応
まぁどれくらいの数の有機合成オタがそういう彼女をゲット出来るかは別として
「オタでは全くないんだが、しかし自分のオタ趣味を肯定的に黙認してくれて、その上で全く知らない有機化学の世界とはんなのか、ちょっとだけ好奇心を持ってる」ような、オタの都合のいい妄想に出てきそうな彼女に有機合成化学のことを紹介するために見せるべき10人名反応を選んでみたいのだけれど。(要は「脱オタクファッションガイド」の正反対版だな。彼女に有機合成化学を布教するのではなく相互のコミュニケーションの入り口として)
あくまでも「入り口」なので、時間的に過大な負担を伴うマニアックな人名反応は避けたい。出来れば教科書に出てくる人名反応、少なくともウォーレン有機化学レベルにとどめたい。あと、いくら有機的に基礎といっても古びを感じるものは避けたい。有機合成化学好きが"Jones oxidation"は外せないと言っても、それはさすがになあ、と思う。
そういう感じ。
彼女の設定は
という条件で。
まずは俺的に。出した順番には実質的には意味がない。